紅葉に包まれた明智光秀の菩提寺 ~ 西教寺

 西教寺は、もう目の前にあった。
 しんと静まったあたりの空気に、本堂の方から鉦を叩く音が
 聞こえてくる。 その音が、一層 静けさを深めている。 (略)
 チーンチーンと 間をおいてひびいてくる。
 静かだ。 いかにも静かである。 (略)
 やがて、光秀が言った。

 「・・・ 人間、この音色のように澄みたいものじゃが ・・・」
  「お父上さまは 澄んでおられます」
 「ほう、お玉の目には 父が 澄んでうつるか?」
 「澄んではおりませぬか」
 「さあて。 人間は なかなか 濁りの消えぬものじゃ 」

 老僧は 振りかえりもしない。 無心に ただ鉦を鳴らし続けている。
 「なるほど、不断念仏じゃ」

 「あ! これは、これは、御領主さま
  御来山を存じませず、まことに失礼いたしました」
 「いや、用があれば わしが出向く。
  わしは、この 不断の鉦の音が好きなのじゃ」

 ~三浦綾子の小説 「細川 ガラシャ夫人 (上) 」 の一場面より



明智光秀に またまた とても会いたくなり
滋賀県坂本の西教寺を訪れました。
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ふだん 静謐の中にある境内は 知る人ぞ知る 紅葉の名所
この時期は 訪れる人が多くなりますが
それでも 静かに落ち着いた佇まいと
本堂から響いてくる 不断念仏の鉦の音は変わりません。
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光秀が好んだ、という鉦の音 ・・・
私の心にも沁み入るような 澄んだ音色 、です。

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光秀ゆかりのものが多く遺されている境内のなかでも
今日 一番行きたかったのは 大本坊の中にある
光秀と 熙子(ひろこ)夫人の木像 のある部屋
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この場所に来る人は少ないのか? 
私がいた間は 誰ひとり来ることがなく
お2人と向かい合って 静かな時間と空間を
たっぷりと ひとり占めして過ごすことができました。
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結婚する際のエピソードに象徴 されるような
ゆるぎない信頼と愛情に結ばれた お2人の生涯は
夫婦としての深い幸せに満ちたものだった、ことでしょう。


本堂の横にある 明智光秀一族の墓所 で
本堂から聞こえる鉦の音を 心地よく耳にしながら
しばし 当時に思いを巡らせる時間も とても好きです。

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熙子(ひろこ)夫人を詠んだ 芭蕉の句
  月さびよ
    明智の妻の はなしせむ



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客殿


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客殿庭園


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光秀に関わる写真が展示されている場所


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光秀夫妻の木像 が祀られた部屋からの景色
庭園の向こう  右は本堂 、左の鐘楼の中には
光秀寄進の坂本城の陣鐘 (非公開) が 収められている。

坂本城主 明智光秀は 熙子(ひろこ)夫人と共に
今も 不断念仏の鉦の音を聴きながら この場所から
坂本城下の町を 静かに見守っているように思えた。


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穴太衆積みの石垣 に映える紅葉


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琵琶湖と 対岸の近江富士を望む この眺望 も素晴らしい!


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2020年のNHK大河ドラマは 明智光秀を描く 「麒麟がくる」
まもなく来年になれば 撮影のロケが行われたり
ドラマ放送の年は 多くの人が訪れることでしょう。
静けさの中の西教寺で 光秀さんに会えるのは
あとしばらくだけ ・・・ のことかも しれません。
今日は 念願だった 木像 の前で 静かな ひとときを
過ごせたことが ほのぼのと 嬉しく思えます。

                    

そして
こういう時 いつも 心に浮かぶのは ・・・
 こうして 行きたくなった時に 自分の行きたい所へ
 いつでも出かけて行けるのは
 4年前の秋に受けることができた心臓再手術のおかげだ、
 と いう思い です。








この記事へのコメント

2018年11月19日 08:02
京都は紅葉のトップシーズンとなり各所の渋滞情報が耳に入ってきます
坂本は静かに季節の移り変わりを愛でる事ができるようですね
紅葉を独り占めできますね
客殿は入った事がないですが落ち着いた空気が流れている庭園、光秀公とご婦人が祀られている部屋
坂本から比叡山は多くの観光客が来ますが、西教寺までは来ないのですね
でも大河ドラマが始まれば、ここ西教寺さんにも沢山の観光バスが来るようになるでしょうね
それはそれで良いことですので、今のうちにこの静かな空間を独り占めしておきたいと思いました
2018年11月19日 22:24
せきあさん
紅葉真っ盛りの時期となりましたね。
私はこの時期の京都盆地、市内は
どうしても敬遠してしまいます…
坂本もこの時期は 他の時期よりも
訪れている人が多いようでしたが
それでも
静かな落ち着いた雰囲気でしたよ。
今回は西教寺だけを訪れたのですが
紅葉が素晴らしかったです!
念願だった明智夫妻の木像と対面し
誰も来ないその空間で ほのぼのと
良い時間を過ごせました。
写真ではわかりにくいですが
木像の横の棚の中に
「左馬助 湖水渡りの鞍」が
展示されていました。

丹波亀山城址に立った時とは
また違う感覚ですが 西教寺は
あの時代に ここに立ったであろう
明智光秀の存在を確かに感じられる
気がして 何度も訪ねたくなる場所です。